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『慢性拳闘症』 [本]


慢性拳闘症

慢性拳闘症

  • 作者: 香川 照之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/02/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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「今度、丹下段平やるんですよね?」
福山雅治にそう訊かれた時、私は知らなかった。私だけが、知らなかった—。

凄まじいまでの役作りで知られる演技派、香川照之。彼はまた、無類のボクシングマニア
でもある。そんな彼が、そして監督が、スタッフが、役者が、全身全霊を込めて闘った記
録。実写版『あしたのジョー』撮影日誌であり、重篤なる“慢性拳闘症”を患うと自覚した
筆者のボクシング愛の記録、そして生きることへの熱い想いがみっしりと詰まった一冊。
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読みながら何度も何度も、巻末の筆者の顔写真と表紙の“段平”とを見比べていた。とにかく、今回の映画のビジュアルを初めて見た時から、この段平にはやられていたのだ。だってこれ、ありえないですよね?そのまんまだし(そのとことんまで“似せる”ビジュアル作りへの葛藤なども記されている。興味深い)。

年代からすれば『あしたのジョー』世代ど真ん中よりちょっと遅れ目である私だが、実はほとんど知らないで過ごしてしまった。原作を読んだのは十数年前、すっかり大人になってからである(ものすごく面白かった)。それにボクシングに特別愛着を感じたりもしていない。今のところ。

だがこの本、あまりに面白くて興奮しながら一気に読んでしまった。映画館にきっと行かなくちゃ。全く無縁の世界の人間をも引き込む情熱が、行間から噴出。そもそも香川氏の本には、いつも興奮させられる。『日本魅録』『中国魅録』いずれものめり込むように読んだ。情熱のある人の勝ちだなあと、つくづく思う。かかわる人々皆が、これだけの情熱を注いで作る作品を、きちんと観に行って自分の力で受けとめていきたい。受けとめる力を持っていたい。

読み手を意識しつつも、ボクシングについて思いの丈を書きつらねずにはいられない香川氏。一緒に映画をつくる仲間たちへの期待、信頼。役をつくり、撮影が進み、何かがはじけとんで“真実”に近づく瞬間。周囲の人々からもらう力。なによりこの“病”を再自覚し、より深く生きる意味をつかむ道のりを読み手は追体験する。パワーが湧きます。

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『ペニーフット・ホテル受難の日』 [本]


ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

  • 作者: ケイト・キングズバリー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/05/05
  • メディア: 文庫


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 エドワード朝のイギリス。海辺に建つペニーフット・ホテルは、上流階級の人々に人気の優雅なお宿。女主人セシリーは、半年前に急逝した夫のためにも、しっかりとこの仕事を続けていこうと決めている。
 ホテル主催の仮装舞踏会を控え、今日も従業員と一緒に準備に余念がないセシリーだったが、活人画用に借りてきたニシキヘビが脱走し、ささいないさかいが勃発し、お客の長話にからめとられ…と小さなトラブルにはことかかない。
だが突然、宿泊客のレディが庭で冷たくなっているのが発見され、セシリーは本物のトラブルのまっただ中に。お堅すぎるほど忠実な支配人のバクスターを巻き込みつつ、愛するホテルをスキャンダルから守ろうとするセシリーの活躍がはじまった。
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 ちょっと優雅すぎたり退屈だったりするのかも、と思ったのは間違った先入観だった。エドワード朝といえば、シャーロック・ホームズの頃のようだ。ふむ、あんな感じなんですね(と、ジェレミー・ブレット演じるホームズが素敵な、グラナダテレビのシリーズを思い起こす)。行動的なセシリーが急に立体的になってきた。
 舞踏会企画委員や従業員、そして宿泊客の女性たちは、総じて行動的かつ印象的。予知能力の持ち主、いつも着飾っている(けど実は没落貴族に近い)実際家、言葉の乱暴なメイドなどなど。しかし、男性陣はそれに輪をかけてキャラ立ちしている。筆頭は、亡くなった旦那様のためにも、突っ走りがちなマダムを御していかねばと思っているらしい支配人のバクスター。巻き込まれ型の気の毒な人ともいえるが、芯が通っている彼の変化が楽しみ。そして、いわくありげな宿泊客のなかでも、話し始めると止まらない退役軍人のフォーテスキュー大佐が絶妙だ。常連さんとのことなので、シリーズが進んでも楽しませて(ホテルの人々にとっては、長いおしゃべりで悩ませて)くれるに違いない。
同時多発する事件の行方とともに、セシリーの未だ癒えることない亡夫への想いも心に残る。ちゃんと続きが翻訳・出版されていきますように。

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『回帰者』 [本]


回帰者 (講談社文庫)

回帰者 (講談社文庫)

  • 作者: グレッグ・ルッカ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫


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 この穏やかな暮らしが永遠に続くとは思っていなかった。けれど、こんなに突然何もかもが引き裂かれるとも、予想できていなかった——。
 グルジアの小さな街で、名前を変えてアリーナとひっそり暮らしていたアティカス。だが、隣人一家が惨殺され14歳の娘ティアサが連れ去られたことで全てが終わりを告げる。ティアサを奪い返すべく世界を駈け抜けるアティカスは、目を背けたい過去と厳しすぎる現実をあえて見つめ、ぎりぎりの闘いを仕掛け続ける。あの女性の再登場も嬉しい、熱く激しいシリーズ完結編。
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 読み続けるのが辛くて、痛いシーンでは本当に痛くて、でもあまりの展開に頁をめくらずにはいられない。
 そして、6年経ってもアティカスは相変わらず弱っちなのであった。いや、元ボディガードの闘う男なのですから、腕力的に弱いわけでは決してない。でも、この人本当にいい人でロマンティストで(作中に誰かからそう言われている)、根っこのところが甘くて、特に女性絡みになると、決定できないとかとことんまで追いつめられないとかいう意味でだめな奴なのだ。そこがなんとも魅力的なことは、言うまでもない。ボディガード時代も、隙のない仕事ぶりと、自分自身で人間関係を修復不能に陥らせてしまうぐだぐださかげんのギャップがひどく新鮮であった。
 今回特筆すべきは、あのはっちゃけ柄悪私立探偵ブリジット・ローガンの再登場だ。彼女のファンは多いはず!昔はアンジェリーナ・ジョリーでどうだと思っていたのだが、ミシェル・ロドリゲスもいいかもと思い始めた。ジェシカ・アルバでもいいかも。あれ、単に自分の好みの女優さんを並べているだけだなこれじゃ。要は、ビッチな唇女優であること、あと、ものすごく長身な女性なのでそこをなんとかしたいところ。ちなみにアリーナはミラ・ジョヴォビッチでいかがでしょう。
 時間をおいてもう一度読み返したい、抜群のシリーズ。

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『州検事』 [本]


州検事(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

州検事(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: マーティン・クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫



州検事(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

州検事(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: マーティン・クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫


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 ろくでなしの兄ゲイツは、手にしていた銃を撃ってしまった。相手は即死、女がらみだった。ロー・スクールから帰省していたメイスンは、すべて承知で証拠を隠滅、事件は迷宮入りとなった。
 20年後。メイスンは弁護士から州検事に転身、美しい妻とひとり娘に恵まれ、全ては順調に思えた。一方ゲイツは転落の一途をたどり、今は刑務所暮らし。メイスンに連絡をよこしては、娑婆に出せお前には出来るだろうと言う兄に、愛想がつきかけていた。そんなある日、突然20年前の事件が蒸し返された。容疑者となったメイスンの闘いが始まる。
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 意外な作品だった。リーガル・サスペンスだとばかり思っていたのだが、法廷での丁々発止、驚くべき証拠、新しい証人といった見せ場があるものではない。自分にとって正しいことをするというのはどういうことなのか、血の繋がり(それは力にも呪縛にもなる)、喪失、他人を理解しようとすること、人間関係の危機を乗り越えることといった、永遠の共感できるテーマが丁寧に描かれる。
 随分中断しながら読んだのだが、改めて本を手にするたびに、今までのシーンが鮮やかに立ち上ってきた。絶妙なリアリティを持つ佳作。
 メイスンの相棒カスティスが好きで、ジェイミー・フォックスなんかどうだろうかと考えている(歌うシーンは、ないけど)。映画じゃなくて、テレビのドラマ・シリーズで観たいな。じっくりと考えたり、続きをわくわくしながら一週間待ったりしたい。
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『空き家課まぼろし譚』 [本]


空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

  • 作者: ほしお さなえ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/06
  • メディア: 新書


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日本海の海際にある海市(かいし)は“日本のベニス”とも称される運河のある街。街の景観保護再生のために設立された海市協会の空き家課に、僕・間宮明25歳は勤めている。歴史的建造物を保護するために、空き家となった古い建物に新しい住み手をみつけ、そのまま再利用していく様々な方策を関連機関とともに考えたり、助成したりしていくのが仕事だ。でもここだけの話、最近は少々不思議な事に出会うことが多いような気がする。しかも事務所一番の新米の僕を振り回すのは上司や諸先輩方ではなくて、課長のひとり娘である汀ちゃん(小学5年生)なのだった。
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タイトルと表紙を見ればだいたい想像つくように、惨殺死体がごろごろ転がっていたりはしない、安心して読めるミステリ。ん、好きですね。探偵役の汀ちゃんは、とある不思議な力を持っていて、それで謎を解くわけなのだが、気張っていないし基本的に元気ないい子なので、にこにこと読めます。他の人を大事に思いやる感じが、でも押しつけがましくなくていいなあ。

古い写真の持つ、ノスタルジックでちょっと背筋がぞくっとしたりする、念、とでもいうもの。そこを上手くとらえた連作。

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『嘘、そして沈黙』 [本]


嘘、そして沈黙 (扶桑社ミステリー)

嘘、そして沈黙 (扶桑社ミステリー)

  • 作者: デイヴィッド マーティン
  • 出版社/メーカー: 扶桑社
  • 発売日: 1992/08
  • メディア: 文庫


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申し分ない暮らしをしている実業家が、自宅で死んでいた。警察は自殺と断定、しかしキャメル刑事は、若き妻がなにかを隠していることを感じとる。魅力的な彼女の秘密とはなにか?かつて署きっての出世頭だったにもかかわらず、いまや漫然と退職と年金暮らしの始まるのを待つだけの万年巡査部長キャメルは、昔の相棒とともにはからずもこの事件に深く関わっていく。一方、顔に口紅で落書きをした惨殺死体が相次いで発見され、リップスティック殺人事件と呼ばれ捜査が始まっていた。
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車酔いをするので、バスの中では本は読まないと決めている。が、これ辛抱できずに読みました。立っていて荷物もあったのに。やめられないです、面白い。描写はわりときついし、今後ろからページを覗き込まれたらちょっとまずいかもとも思うのだが、止まらなかった。

それでもセンセーショナルな描写とツイステッドな展開で読ませる、単なるサイコ・スリラーと思っていた。が、最後の最後で突然。

ちょっと凄かったです、もっと読まねば。エルロイとかクラムリーが寄せた賛辞は、大げさではない。



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『サンドウィッチは銀座で』 [本]


サンドウィッチは銀座で

サンドウィッチは銀座で

  • 作者: 平松 洋子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/01
  • メディア: 単行本


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よき店の、よき料理、そしてお酒。季節の移り変わりを舌で感じる。いや舌だけではない、まさに五感をフル稼働させて、味わいつくす。『オール讀物』連載の“いまの味”をまとめた一冊。
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いやあ、大変でした読み終わるまでが。「うなぎ…」「うなぎの串焼き!?」「ああ、たいめいけん!」「んんんん〜〜」などとぶつぶつつぶやきながら読んでしまった。公共交通機関では開かないほうがいい。夜に家で読んでいたのだが、さっさと仕度して街に飲みに行きたくなって困った。

実際に足を運んだ事のある店は数軒なのだが、なんだか自分も知っているような気分になってしまう。子どもの頃、親と街場に出掛けた時に寄って食べた、大好きだった店、今はないそれらの店のことを突然思い出したり。ちゃんと食べることの好きな、よい大人になりたいものだ。お酒も楽しいね。過ぎなければね。

上野の“聚楽台”で食べてみたかった…。と思って検索したら、あらあのグループなんだ、私の街にも系列店があるじゃないですか。今度行こう。

表紙をつくづく眺めては、サンドウィッチに思いを馳せてしばしぼおっとしてしまう。悶絶して読むべし。

谷口ジロー氏の挿画(というよりも同じお題で平松さんと谷口氏が競演しているという感じなのだ)、こちらも奥行きがあって味わい深い。ああ、神田をまたうろついてみたい…。



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『卵をめぐる祖父の戦争』 [本]


卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838))

卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838))

  • 作者: デイヴィッド・ベニオフ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/08/06
  • メディア: 新書


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作家である私は、祖父に話を聞きにやって来た。レニングラード包囲戦を体験している祖父は、18才になる前にドイツ人を二人殺している。誰から聞いたのかわからないその話を、改めて祖父から語ってもらいたくなったのだ…。1942年、ドイツ包囲下のレニングラードで、17才の祖父は、上官の娘の結婚式のために卵1ダースを調達せねばならなくなった。この飢餓地獄の中、どこでどうやって?相棒となったおしゃべりなコーリャという男と共に、祖父がくぐりぬけた戦争の実際とは。
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年末年始にかけて、非常に集中できない状態で読んでしまった。のだが、これは読ませる。命がけの任務は卵の調達というあほらしさ、包囲戦の最中の人々の状態や兵士たちの様子が皮膚感覚でせまるような語り口、そこをくぐり抜けていく二人は、けれどもまるでえんえんと下ネタ満載の漫談でもやっているかのようなコンビ。置かれた状況の非現実的なまでの愚かしさが浮かび上るが、悲壮感や押しつけがましさはなく、まさに活劇であり、バディムービー、ロードムービーを観ているかのようなのだ。エンターテインメントなのに、歴史の真実が光り、青年期の甘酸っぱさまで立ち上る、雪の中の万華鏡のような一冊。2010年の各種ベストテンで軒並み上位に登場しているのも納得。女の子たちの屋敷のところや、チェスのシーンなど忘れ難い。映画化できそうと思うのも当然、作者は『トロイ』や『ウルヴァリン』を手がけた脚本家なのだ。
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『ラビット病』 [本]


ラビット病 (新潮文庫)

ラビット病 (新潮文庫)

  • 作者: 山田 詠美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1994/10
  • メディア: 文庫



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「ゆーりちゃん」
「ローバちゃん」
「私たちはうさぎー」
それが二人のテーマソング。うさぎのようにくっついていないと、みみみ警報器が鳴り出してしまう。天涯孤独の変わり者ゆりと純情軍人ロバートの、激甘ラヴ・ストーリーズ。
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あけましておめでとうございます。2011年は卯年。うさぎといえば、この本でしょう。心の双子、ゆりとロバートの、周囲をもべったべたに甘く染めてしまうお話たち。読んでいてほっこりとあたたかくなる一冊。この本を読んで以来、私は菓子店ですあまを見かけるたびに、何やらいとおしく、かつせつない気持ちにおそわれている(何故なのかは、「すあまのこども」を読めばおわかりいただけよう)。

なんでもない会話がいきいきと立ち上がってくる。愛して愛されている心地よさを堪能できる。山田詠美さんの本は、元気をもたらしてくれる。そして、近年彼女は、なにやら凄い領域にまで到達していると思う。ずっと読み続けていきます

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『ロードサイド・クロス』 [本]


ロードサイド・クロス

ロードサイド・クロス

  • 作者: ジェフリー・ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/10/28
  • メディア: 単行本



==パトロール警官が路肩に見つけた十字架—交通事故の死者を追悼する十字架—には、事故の日付だけが記されていた。明日の日付が。それが始まりだった。
 二週間前に起きた、高校生の自動車事故。死者が二人出てしまったその事故について、あるブログが記事にした。運転手は逮捕されておらず、道路管理の責任を問う声も特にない、誰も事故の責任を追及していないという記事。高校生である運転手の名は当然伏せられていたが、その人物を暴き中傷する書き込みがあり、どんどんエスカレートしていく。やがて、悪意の書き込みをした人物が次々に命を狙われはじめた。路肩の十字架は、それを予告しているのだった。事故車の運転手との繋がりは?犯人は次に誰を狙う?美しき人間嘘発見器キャサリン・ダンスがついにたどりついた真実とは==

 今回キャサリン・ダンスが挑む事件は、ネット社会の闇そのもの。姿なき悪意に震撼。しかも彼女には仮想社会のみならず、現実社会でも敵が現れる。仕事のこと、家族のこと、個人のこと。キネシクスの天才ではあるけれども、母親であり娘であり、働く女性であるダンスの悩みや喜びはとても共感できるもので、彼女を身近に感じられる。事件の展開やまたしても意外な真相(くるりくるりとひねってある。乞うご期待!!)のみならず、ダンス自身のドラマにもはらはらと惹きつけられる、円熟の一冊。まさにページターナー、寝不足必至です。現に私は、残業して通常よりも3時間遅く帰宅した後、寝る前に続きちょっとだけ、と手にしてしまい、結局残りの3分の1を読み切ってしまった。翌日、確かに眠かったけれども大変満足していたので元気に過ごした。

 著者ディーヴァーは、来週初来日!講演も面白い方らしいので、話聞きに行ける人が羨ましい。しかも今度の007の新作(小説の、である)を手がけるそうじゃないですか。一層のご活躍を期待します。ここのところ、全くはずれなし。今回も、全く別の本を読んでいたところをそちら文字通り放り出して読みました。大満足。


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