『ペニーフット・ホテル受難の日』 [本]
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エドワード朝のイギリス。海辺に建つペニーフット・ホテルは、上流階級の人々に人気の優雅なお宿。女主人セシリーは、半年前に急逝した夫のためにも、しっかりとこの仕事を続けていこうと決めている。
ホテル主催の仮装舞踏会を控え、今日も従業員と一緒に準備に余念がないセシリーだったが、活人画用に借りてきたニシキヘビが脱走し、ささいないさかいが勃発し、お客の長話にからめとられ…と小さなトラブルにはことかかない。
だが突然、宿泊客のレディが庭で冷たくなっているのが発見され、セシリーは本物のトラブルのまっただ中に。お堅すぎるほど忠実な支配人のバクスターを巻き込みつつ、愛するホテルをスキャンダルから守ろうとするセシリーの活躍がはじまった。
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ちょっと優雅すぎたり退屈だったりするのかも、と思ったのは間違った先入観だった。エドワード朝といえば、シャーロック・ホームズの頃のようだ。ふむ、あんな感じなんですね(と、ジェレミー・ブレット演じるホームズが素敵な、グラナダテレビのシリーズを思い起こす)。行動的なセシリーが急に立体的になってきた。
舞踏会企画委員や従業員、そして宿泊客の女性たちは、総じて行動的かつ印象的。予知能力の持ち主、いつも着飾っている(けど実は没落貴族に近い)実際家、言葉の乱暴なメイドなどなど。しかし、男性陣はそれに輪をかけてキャラ立ちしている。筆頭は、亡くなった旦那様のためにも、突っ走りがちなマダムを御していかねばと思っているらしい支配人のバクスター。巻き込まれ型の気の毒な人ともいえるが、芯が通っている彼の変化が楽しみ。そして、いわくありげな宿泊客のなかでも、話し始めると止まらない退役軍人のフォーテスキュー大佐が絶妙だ。常連さんとのことなので、シリーズが進んでも楽しませて(ホテルの人々にとっては、長いおしゃべりで悩ませて)くれるに違いない。
同時多発する事件の行方とともに、セシリーの未だ癒えることない亡夫への想いも心に残る。ちゃんと続きが翻訳・出版されていきますように。
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