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『あしたのジョー』 [映画]

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 ドヤ街でケンカを繰り返す矢吹丈。ある日のケンカ中、元ボクサー丹下段平に素質を見出されるが興味はなく、刑務所送りになる。しかし、そこで出会ったプロボクサー・力石徹にまるで魅せられるかのようなライバル意識を持ち、段平の送る葉書によってひとりトレーニングを重ねる。同様に丈を強烈に意識し続ける力石。二人の対決はやがてリングの上へと舞台を移す。そこへ至る永く厳しい道のりと、思いも寄らぬ結末——。
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香川照之氏の『慢性拳闘症』を読んでしまった時点で、この映画を思い入れなく観る事は出来なくなっていた。でも、それ以上の事は起こらないのではないかと、下手すると『慢性拳闘症』が一番面白いということになるのではないかと疑ってもいた。

すみませんでした。

香川氏の丹下段平は期待通り。オーバーアクトは全く気にならず。もうジョーがかわいくていとおしくてたまらん、という厳しくも情け深いおやっつぁんでした。

力石。そもそも伊勢谷友介は気になる役者。それにしても期待以上。凄絶でした。リングに登らずにはいられない、ジョーと闘わずにはいられない、それなくして人生はありえないという炎と狂気を確かに見た。普段のクールな表情との差がとてもいい。

ドヤ街のみなさん、いい顔してる!子どもたちのなかに、どうしてもこちらが破顔してしまうような愛らしいぶーちゃん顔の子がいる。杉本哲太がほぼ意味のないヤクザの兄貴なのだが、まあいいや好きだから。西の鼻から、ちゃんとうどんが出ますし。私が見ると、あのドヤ街は素晴らしいんじゃないかと思うのだが、何せ実感としては持っていないので困っている。

いつも主役には興味ないのだけれど、山下くんは野性をごりおしするのではなくて奥の方から引き出そうとしている感じ。刑務所で(あれは少年院ではないような気がする)雑巾なすりつけて「悪りぃ悪りぃ、便器みたいな顔だったんで」とケンカ売るところがよかった。あと、時々凄い目つきをする(身体的に痛めつけられると本気の顔になると香川氏も書いていた)。ジョーと力石がなんだってそんなにお互い宿命のライバルと認め合うのか、のあたりをもっと見たかった。

ボクシングについては本当に知らなくて、中継も見た事なければ『ロッキー』や『レイジング・ブル』でさえまともに見ていない。でも昔はそこが苦手だった鍛えた筋肉、それがぼこぼこに痛めつけられるところ、飛び散る汗、血、よだれ、腫れ上がった顔…が美しく感じられる。リングを上から捉えるカメラ。殴られてひしゃげる顔。

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『坂道のアポロン』7巻 [漫画]


坂道のアポロン 7 (フラワーコミックスアルファ)

坂道のアポロン 7 (フラワーコミックスアルファ)

  • 作者: 小玉ユキ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/02/10
  • メディア: コミック


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突然渡された律子からのプレゼント。嬉しさよりもとまどいに捉えられてあれこれ思い悩む薫。千太郎の留年危機、薫の風邪欠席などの事件(?)を経て、ようやくふたりは一緒に歩き始める。しかし、突然の手紙が波乱の予兆を運んできた…。
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青春。青春です。ぐちゃぐちゃ思い悩む薫は青春のど真ん中。

しかし!今回のトピックスは、なんといっても丸尾君なのだ!!どうしたのだ丸尾!たいへんだ丸尾!

前の巻の百合香先輩の件と、次に控える大事件(たぶん。だって巻末の次巻予告に“衝撃展開!!”って書いてある)の間の一冊で、下手すれば単なる地味なつなぎになりかねないところなのに、一コマ一コマが美しくて面はゆくて(青春だから)しかもおかしくて、大切に何度も読み返してしまう。ゆったりとだけれど時間がうつろっていきます。今年の春は“サテン・ドール”だな。
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アカデミー賞(2011年・第83回)雑感 [映画]

今年のアカデミー賞は、何故か自分の中での盛り上がりに欠けてする〜っと終了してしまったように思う。かれこれ20年授賞式を追いかけているわけだが、これはいったいどうしたことかしらと考えていた。あんまりにも予想通りの結果だったからかしらとか、ブランジェリーナもジュリア・ロバーツもいないからかしらとか。でもあれこれ思い出しているうちに、やっぱり楽しんでいたことに気付いてきた。お祭りってのは楽しんだもの勝ちなのだから。それにしてもアカデミーは英国がお好きですなあ。というわけで雑感を。

司会の若い二人。オープニングのアレック・ボールドウィンの夢の中(?)も好きだったのだが、なんといってもジェイムズ・フランコの女装(マリリン・モンロー。うっかり「マドンナだ!」と思った自分猛反省。いくら『マテリアル・ガール』好きだっていっても、本家を思い出さなくてどうする)に尽きるでしょう。どうするんだフランコ!大丈夫なのかフランコ!呼んでもらえなくなるぞ〜。まあ、今までの彼のキャリアを考えると、当然予想すべきではありましたがね。その時アン・ハザウェイは素で笑っていたと思う。ヒュー・ジャックマンをおちょくる歌を熱唱した後でした。

助演女優賞のプレゼンター、カーク・ダグラス。すごくおかしい!ウィットききすぎるくらいのスピーチです。しかも受賞したメリッサ・レオがいきなりFワード発言ですから!姐さんも歴史に名を刻みましたね。

『インセプション』があんなに受賞するなら(4部門)、やっぱり監督賞に入っていてほしかった。惜しい。斬新な映画だったのだと思います(実は未見。ああもう、絶対に観ようと思っていたのに観てない映画が沢山あるよ!)。

プレゼンターは楽しそうですね。ヘレン・ミレンの格調高いフランス語スピーチをテキトー英訳するラッセル・ブランド(「ヘレンは、あたしの女王の方がコリン・ファースの王よりもよかったYo!と言ってます」とかね。言ってません)。ロバート・ダウニー・Jr.とジュード・ロウなんか、ロバートさん逮捕事件の自虐ネタでした。メイクアップ賞のプレゼンター、ケイト・ブランシェットは、候補作紹介ビデオを見て「…キモっ」。あ、ビリー・クリスタルの登場が嬉しかった。「変わらないですね。時間がないのでここで作品賞いきますよ」

レッド・カーペットで妙に目立っていた、伸びすぎたパンチパーマみたいな髪の男の人が気になっていた。そうしたら、短篇実写映画賞で突如候補作の画面に登場!『God of Love』という作品の主演男優らしい。ハートのダーツを彼女に渡したりしている、なんだか面白そうなその作品が見事オスカーを受賞し、予想通りその男性が登壇!開口一番「髪切ってくればよかった」とか言ってます!要チェックな予感!

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『慢性拳闘症』 [本]


慢性拳闘症

慢性拳闘症

  • 作者: 香川 照之
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/02/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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「今度、丹下段平やるんですよね?」
福山雅治にそう訊かれた時、私は知らなかった。私だけが、知らなかった—。

凄まじいまでの役作りで知られる演技派、香川照之。彼はまた、無類のボクシングマニア
でもある。そんな彼が、そして監督が、スタッフが、役者が、全身全霊を込めて闘った記
録。実写版『あしたのジョー』撮影日誌であり、重篤なる“慢性拳闘症”を患うと自覚した
筆者のボクシング愛の記録、そして生きることへの熱い想いがみっしりと詰まった一冊。
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読みながら何度も何度も、巻末の筆者の顔写真と表紙の“段平”とを見比べていた。とにかく、今回の映画のビジュアルを初めて見た時から、この段平にはやられていたのだ。だってこれ、ありえないですよね?そのまんまだし(そのとことんまで“似せる”ビジュアル作りへの葛藤なども記されている。興味深い)。

年代からすれば『あしたのジョー』世代ど真ん中よりちょっと遅れ目である私だが、実はほとんど知らないで過ごしてしまった。原作を読んだのは十数年前、すっかり大人になってからである(ものすごく面白かった)。それにボクシングに特別愛着を感じたりもしていない。今のところ。

だがこの本、あまりに面白くて興奮しながら一気に読んでしまった。映画館にきっと行かなくちゃ。全く無縁の世界の人間をも引き込む情熱が、行間から噴出。そもそも香川氏の本には、いつも興奮させられる。『日本魅録』『中国魅録』いずれものめり込むように読んだ。情熱のある人の勝ちだなあと、つくづく思う。かかわる人々皆が、これだけの情熱を注いで作る作品を、きちんと観に行って自分の力で受けとめていきたい。受けとめる力を持っていたい。

読み手を意識しつつも、ボクシングについて思いの丈を書きつらねずにはいられない香川氏。一緒に映画をつくる仲間たちへの期待、信頼。役をつくり、撮影が進み、何かがはじけとんで“真実”に近づく瞬間。周囲の人々からもらう力。なによりこの“病”を再自覚し、より深く生きる意味をつかむ道のりを読み手は追体験する。パワーが湧きます。

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『ソーシャル・ネットワーク』 [映画]

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成績抜群なのに、どうやらあまり人付き合いが上手くないハーバード大学生、マーク・ザッカーバーグ。今夜も喋れば喋るほど恋人を不快にさせてしまい、とうとう別れを言い渡されてしまった。寮に戻り、ほとんど腹いせでハーバードのコンピュータをハッキングして女子学生の顔写真を集め、それをランキングするサイトを立ち上げる。ビールをあおり、一方的に去った恋人の悪口をブログにアップしながら。2時間で2万2千アクセスのあった女子大生ランキングサイト“フェイスマッシュ”、それがすべての始まりだった。
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 全世界で5億人が利用するという巨大なソーシャル・ネットワーク“フェイスブック”を創った男の物語。いつの間にか大した実力者となったデヴィッド・フィンチャーの最新作である。目下今年の賞レースの大本命。
 “最も若い億万長者”のサクセス・ストーリー。…ではある、のだが、ここに描かれる男の子たちはなんだかろくでもない。美化するどころか、悪く脚色されているみたい(“リアル”ザッカーバーグ氏は、フェイスブック創設前から付き合っている恋人と、今でも続いているという話だし)。
 マークはとにかくよく喋る奴なのだが、頭の回転が良すぎるらしくて会話が成り立たないこともしばしば。いわゆるおたくで、成績は良いのにあかぬけない、自意識過剰と強烈なコンプレックスを抱えている。しかしパソコンに向かうと敵なしの行動派。ああ、でもアルゴリズムは親友に頼っていたなあ。演じるジェシー・アイゼンバーグは、今後この型にはめられて役者として苦しむのではないかと心配になるほどの見事な演技。
 さて、アルゴリズムを書き、CFOとして出資したりスポンサーを探したり活躍していたのに、いつのまにか居場所をなくしていき、ついに決定的な出来事から親友を訴えることになるエドゥアルドは、アンドリュー・ガーフィールド。『わたしを離さないで』にも出演、新スパイダーマンに決まった有望株。って、『Dr.パルナサスの鏡』のあの一座の若い衆か!まあまあ、立派になって。
 彼らの活動と友情に大きな影響を及ぼす、ナップスター創設者ショーン・パーカーが、ジャスティン・ティンバーレイク。うさんくさい!素晴らしい!
 富豪のご子息、ハーバードの勝ち組であるボート部の双子くんが、素敵に嫌みで、でも変に紳士だったりしてよかったのだ。こんなイケメン双子をよくキャスティングできたなあと感心していたら、なんと一人二役だった。いや〜びっくり!
 異様に台詞が多い(脚本も素晴らしい、テレビシリーズ『ザ・ホワイトハウス』や『ア・フュー・グッドメン』のアーロン・ソーキン)のだが、説明的なものではなく、人物像やお互いの感情などの複雑な部分を映画として見せてくれる。時間軸に沿ってストーリーが語られるのではなく、いくつかの視点から再構築されているのも好み。なんてことない脇役までも印象深い、優れた作品。
 ところで、天下のハーバードに入ったところで、やつらああいったパーティばっかりしてるんですかね。いつの間にか親目線。ああ、歎かわしい(笑)。
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