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『ペニーフット・ホテル受難の日』 [本]


ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

  • 作者: ケイト・キングズバリー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/05/05
  • メディア: 文庫


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 エドワード朝のイギリス。海辺に建つペニーフット・ホテルは、上流階級の人々に人気の優雅なお宿。女主人セシリーは、半年前に急逝した夫のためにも、しっかりとこの仕事を続けていこうと決めている。
 ホテル主催の仮装舞踏会を控え、今日も従業員と一緒に準備に余念がないセシリーだったが、活人画用に借りてきたニシキヘビが脱走し、ささいないさかいが勃発し、お客の長話にからめとられ…と小さなトラブルにはことかかない。
だが突然、宿泊客のレディが庭で冷たくなっているのが発見され、セシリーは本物のトラブルのまっただ中に。お堅すぎるほど忠実な支配人のバクスターを巻き込みつつ、愛するホテルをスキャンダルから守ろうとするセシリーの活躍がはじまった。
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 ちょっと優雅すぎたり退屈だったりするのかも、と思ったのは間違った先入観だった。エドワード朝といえば、シャーロック・ホームズの頃のようだ。ふむ、あんな感じなんですね(と、ジェレミー・ブレット演じるホームズが素敵な、グラナダテレビのシリーズを思い起こす)。行動的なセシリーが急に立体的になってきた。
 舞踏会企画委員や従業員、そして宿泊客の女性たちは、総じて行動的かつ印象的。予知能力の持ち主、いつも着飾っている(けど実は没落貴族に近い)実際家、言葉の乱暴なメイドなどなど。しかし、男性陣はそれに輪をかけてキャラ立ちしている。筆頭は、亡くなった旦那様のためにも、突っ走りがちなマダムを御していかねばと思っているらしい支配人のバクスター。巻き込まれ型の気の毒な人ともいえるが、芯が通っている彼の変化が楽しみ。そして、いわくありげな宿泊客のなかでも、話し始めると止まらない退役軍人のフォーテスキュー大佐が絶妙だ。常連さんとのことなので、シリーズが進んでも楽しませて(ホテルの人々にとっては、長いおしゃべりで悩ませて)くれるに違いない。
同時多発する事件の行方とともに、セシリーの未だ癒えることない亡夫への想いも心に残る。ちゃんと続きが翻訳・出版されていきますように。

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『回帰者』 [本]


回帰者 (講談社文庫)

回帰者 (講談社文庫)

  • 作者: グレッグ・ルッカ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫


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 この穏やかな暮らしが永遠に続くとは思っていなかった。けれど、こんなに突然何もかもが引き裂かれるとも、予想できていなかった——。
 グルジアの小さな街で、名前を変えてアリーナとひっそり暮らしていたアティカス。だが、隣人一家が惨殺され14歳の娘ティアサが連れ去られたことで全てが終わりを告げる。ティアサを奪い返すべく世界を駈け抜けるアティカスは、目を背けたい過去と厳しすぎる現実をあえて見つめ、ぎりぎりの闘いを仕掛け続ける。あの女性の再登場も嬉しい、熱く激しいシリーズ完結編。
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 読み続けるのが辛くて、痛いシーンでは本当に痛くて、でもあまりの展開に頁をめくらずにはいられない。
 そして、6年経ってもアティカスは相変わらず弱っちなのであった。いや、元ボディガードの闘う男なのですから、腕力的に弱いわけでは決してない。でも、この人本当にいい人でロマンティストで(作中に誰かからそう言われている)、根っこのところが甘くて、特に女性絡みになると、決定できないとかとことんまで追いつめられないとかいう意味でだめな奴なのだ。そこがなんとも魅力的なことは、言うまでもない。ボディガード時代も、隙のない仕事ぶりと、自分自身で人間関係を修復不能に陥らせてしまうぐだぐださかげんのギャップがひどく新鮮であった。
 今回特筆すべきは、あのはっちゃけ柄悪私立探偵ブリジット・ローガンの再登場だ。彼女のファンは多いはず!昔はアンジェリーナ・ジョリーでどうだと思っていたのだが、ミシェル・ロドリゲスもいいかもと思い始めた。ジェシカ・アルバでもいいかも。あれ、単に自分の好みの女優さんを並べているだけだなこれじゃ。要は、ビッチな唇女優であること、あと、ものすごく長身な女性なのでそこをなんとかしたいところ。ちなみにアリーナはミラ・ジョヴォビッチでいかがでしょう。
 時間をおいてもう一度読み返したい、抜群のシリーズ。

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『州検事』 [本]


州検事(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

州検事(上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: マーティン・クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫



州検事(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

州検事(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: マーティン・クラーク
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫


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 ろくでなしの兄ゲイツは、手にしていた銃を撃ってしまった。相手は即死、女がらみだった。ロー・スクールから帰省していたメイスンは、すべて承知で証拠を隠滅、事件は迷宮入りとなった。
 20年後。メイスンは弁護士から州検事に転身、美しい妻とひとり娘に恵まれ、全ては順調に思えた。一方ゲイツは転落の一途をたどり、今は刑務所暮らし。メイスンに連絡をよこしては、娑婆に出せお前には出来るだろうと言う兄に、愛想がつきかけていた。そんなある日、突然20年前の事件が蒸し返された。容疑者となったメイスンの闘いが始まる。
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 意外な作品だった。リーガル・サスペンスだとばかり思っていたのだが、法廷での丁々発止、驚くべき証拠、新しい証人といった見せ場があるものではない。自分にとって正しいことをするというのはどういうことなのか、血の繋がり(それは力にも呪縛にもなる)、喪失、他人を理解しようとすること、人間関係の危機を乗り越えることといった、永遠の共感できるテーマが丁寧に描かれる。
 随分中断しながら読んだのだが、改めて本を手にするたびに、今までのシーンが鮮やかに立ち上ってきた。絶妙なリアリティを持つ佳作。
 メイスンの相棒カスティスが好きで、ジェイミー・フォックスなんかどうだろうかと考えている(歌うシーンは、ないけど)。映画じゃなくて、テレビのドラマ・シリーズで観たいな。じっくりと考えたり、続きをわくわくしながら一週間待ったりしたい。
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ゴールデン・グローブ賞(2011年・第68回) 雑感 [映画]



年が明けると、映画の賞レースがぐんぐん加速するのだった。本日授賞式、日本での放送はAXNでこの週末なので、結果の速報だけ聞いての感想を。

映画部門。
助演男優賞がクリスチャン・ベール。ああ、なんだか今まで賞に絡んでこなかった彼ですが、よかったですね。

主演女優賞は、ミュージカル部門がアネッタ・ベニング。私好みの低い声で、何演らせても完璧で、しかも夫はウォーレン・ベイティだという凄い方。ドラマ部門がナタリー・ポートマン!おめでとう!少しふっくらしている幸せいっぱいの彼女、結婚と出産のきっかけになった作品での受賞。

主演男優賞がコリン・ファース。ドラマ部門でしょうね、アメリカ人は英国が好きだな〜。まあ、ゴールデン・グローブ賞を選んでいるのは外国人記者なわけだけど。

ドラマ部門の作品賞・監督賞・脚本賞・音楽賞の4冠に『ソーシャル・ネットワーク』だ!本当は今日これを観に行くつもりだったのだけれど、あんまり雪が降っているのでやめたのであります。ちゃんと観るから、上映していてね。
予告がすごくよかったので期待しているのだ。

テレビ部門。
ドラマ・シリーズ部門の作品賞と主演男優賞が、マーティン・スコセッシの『BOARDWALK EMPIRE』。主演はブシェミさんです。おめでとう!

ミュージカル・コメディシリーズ部門はまたしても『Glee』だ!助演男優賞がクリス・コルファー(カート役。かわいい!)、助演女優賞がジェーン・リンチ先生ということ。

レッド・カーペットの写真を見ると、今年も優美なドレスが多いな〜。アンジェリーナ・ジョリーはまたも美しい緑のドレス、なのだが、キャサリン・ゼタ・ジョーンズもミラ・クニスも緑なのですよ。色合いは、3人とも微妙に違うんだけどね。流行っているのか?アンジーは2年くらい前にも素晴らしい緑のドレスを着ていた。アン・ハザウェイのドレスも素敵です。あと、ブラッド&アンジー、マイケル・ダグラス(病から回復したとのこと、よかったです)&ゼタ姐さん、ニコール・キッドマン&キース・アーバンなど美しいご夫婦が目白押し、素敵です。すっげーめんこい(かわいい)若い男の子がいるけど誰!?と思ったら、今をときめくジャスティン・ビーバー君でした。体調戻ったのね、間にあってよかったです。

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『空き家課まぼろし譚』 [本]


空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

  • 作者: ほしお さなえ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/01/06
  • メディア: 新書


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日本海の海際にある海市(かいし)は“日本のベニス”とも称される運河のある街。街の景観保護再生のために設立された海市協会の空き家課に、僕・間宮明25歳は勤めている。歴史的建造物を保護するために、空き家となった古い建物に新しい住み手をみつけ、そのまま再利用していく様々な方策を関連機関とともに考えたり、助成したりしていくのが仕事だ。でもここだけの話、最近は少々不思議な事に出会うことが多いような気がする。しかも事務所一番の新米の僕を振り回すのは上司や諸先輩方ではなくて、課長のひとり娘である汀ちゃん(小学5年生)なのだった。
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タイトルと表紙を見ればだいたい想像つくように、惨殺死体がごろごろ転がっていたりはしない、安心して読めるミステリ。ん、好きですね。探偵役の汀ちゃんは、とある不思議な力を持っていて、それで謎を解くわけなのだが、気張っていないし基本的に元気ないい子なので、にこにこと読めます。他の人を大事に思いやる感じが、でも押しつけがましくなくていいなあ。

古い写真の持つ、ノスタルジックでちょっと背筋がぞくっとしたりする、念、とでもいうもの。そこを上手くとらえた連作。

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