『化身』宮丿川顕 [本]
長らく読んでみようかどうしようかと悩んでいた本。友人が薦めてくれたのに背を押されて、手にした。
==まさかこんなことになるなんて。誰にも行き先を告げずにふらりと休暇に出たぼくは、密林の奥で池に落ち、そのままあがれなくなってしまった。一日が経ち、数日、数週間とぼくは生きることだけに執着し、仕事にうんざりしていた日常など忘れてしまう。そして、変わったのは気持ちの面だけではなかった…==
2009年の第16回日本ホラー小説大賞受賞作。この賞は、『ぼっけえ、きょうてえ』とかとっているものだ。ちょっと腰が引けて、手が出せなかったのだ、評判のよいのは知っていたのに。だってまず表紙が、き、気持ち悪いもの。
一読して、驚嘆。身体感覚としてじわりじわりと迫ってくるいやな感覚、この表紙はまさにそれをあらわしているのだった。昼休みに読んでいたのだが、非常に気味が悪くなってしまい、けれどもあまりのことに読み進めずにはいられないのだ。皮膚にぺたりと貼り付くような、そして皮膚の裏側に入り込むような、気持ち悪さ。これはちょっと凄い。
書き下ろしの二作も、先が読めるかと思わせておいて予想と異なる展開で、うーむとうならせる。楽しみな作家さんの登場だ。
コメント 0